最初の一筆

 自分はこれこれこんな人間だとか、これこれこんな人付き合いをしているとか、そんなことを思い出して、気の散る元となるよけいな邪念をなんとか鎮めると、やおら手をのばして絵筆をかまえた。筆は苦しくともときめく恍惚に震えながら、いっとき宙に浮いたままでいた。どこから描きはじめるべきか?――それが問題だ。最初の一筆をどこにおくべきか?ひとたびカンバスに線を一本描いたが最後、そこから先は、無数のリスクや、取り返しのつかない決断を頻々と迫られることになる。・・・・・。どれほどの困難があろうと、それを覚悟のうえで最初の一筆をおかなくてはならない。
204p

『灯台へ』
ウルフ
世界文学全集
河出書房新社

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