遺体を寄贈する?

ご存じのように、死後も科学のお役に立てれば、とさまざまな仕方で自分の遺体を解剖学研究所に寄贈する人たちがいます。けれども、医者である私の立場からすれば、人間をこのようにきわめて実際的に価値づけることは、許されてはならないことなのです。
 たしかに、医者のまえには、事実が「置かれて」います。医者は、患者に対して、内面的な距離を保った態度を取らざるをえません。とにかく、病院での医者の回診が行われるようすを思い出してみればわかります。医者がみているのは、いつだって、人間ではなく、「ケース」なのです。回診のとき病院長を案内する助手は、病院長に患者をあれこれの病気の「一例」として示します。概して、医者は、自分が治療するのは、患者、つまり病人ではなく、病気そのものだと考えがちです。そして、「これは・・・の一症例です」といういいまわしをくり返し耳にします。注意してください。「これは」なのです。つまり、「この人は」ではないのです。また、「です」なのです。つまり、「かかっている」ではないのです。つまり、この人が病気にかかっているのではなくて、たんに、この人はこのケース「そのものだ」というのです。・・・。
90p

『それでも人生にイエスと言う』
V・E・フランクル著
春秋社

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