フィリピン エスコーダ女史

 しかし、とうとう彼女も囚人にされてしまった。度重なる拷問。体はやせ衰え、傷だらけになった。だが、どんなに傷つけられても、同志を裏切らなかった。何ひとつ、敵に情報を漏らさなかった。
 苦渋の日々にあっても、彼女は常に「私は正しいのだ」という明るさがあった。いつも未来のことを語り、希望を捨てなかった。祖国の”最後の勝利”を信じていた。
 また、与えられた食べ物は、必ず同じ牢の友人と分かち合ったという。なかなかできることではない。普通なら、人の分を奪ってでも生き延びようという極限の環境だったにちがいない。しかし彼女の周囲には、永遠に変わらざる「同志」の世界があった。
 「私はいい、あなたが食べなさい」――どこまでも友を思い、同志と共に戦う。人間としての「王者」の姿である。「王女」の姿である。
 この心美しき、気高き女性を、日本軍は死にいたらしめた。彼女の夫も殺された。日本軍に殺されたフィリピン人は、百万人を超え二百万人とさえ言われている。何の罪もない人々であった。
 あまりにも非道なこの歴史を、私どもは、原爆の悲劇とともに、絶対に風化させてはならないと思う。
353p

『池田大作全集』第120巻
虹の調べ
聖教新聞社

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