母が相手だと

あの時ジェイムズは母を追いかけて、部屋から部屋へと渡り歩き、とうとうある部屋の辿りつくと,母は無数の青磁の色を映すかのような青みがかった明かりのなかで、だれかと話しだした。ジェイムズはその話を黙って聞いていた。母は使用人に用事を言いつけているところで、思いついたことをそのまま喋っているような感じだ。「今夜は大皿が要るわ。あれはどこに行ったかしら、あの青磁のお皿は?」本当のことを言ってくれるのは母だけだったし、ジェイムズも母にだけは本当のことを話せた。たぶん、自分を惹きつけてやまないのは、母のそういう点だったのだろう。母が相手だと、他の人たちも思ったことをすんなり話せるのだった。
240p

『世界文学全集』
灯台へ
ウルフ
河出書房新社

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