生まれる前の因をしまっておく場所

 しかし私たちは、実践上の最大の利益をもとめて、物事の本当の秩序を転倒する根強い習慣をもち、空間からとられた比喩に極度にとらわれているので、記憶がどこに保存されるかということを、問題にせずにはいられない。わたしたちは物理化学的現象が脳の中で起こり、脳は身体の中にあり、身体はそれを浸す空気の中にあると考える。しかしいったん完了した過去は、もし保存されているとすれば、どこにあるのだろうか。それを分子の変化の状態で脳髄の中に置くことは、簡単明瞭なように見える。この場合私たちは現にあたえられた容器をもっていて、それをひらきさえすれば潜伏的イマージュが意識に流れ出てきそうだからである。しかし脳がこうのような用をなさないとすれば、私たちは蓄積されたイマージュを、どこの倉庫にしまっておくのだろうか。
168p

『物質と記憶』
アンリ・ベルグソン
白水社

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