「積極的自由」

 個人に安定感をあたえていた第一次的な絆がひとたび断ち切られるやいなや、そして個人がかれのそとに完全に分離した全体としての世界と直面するやいなや、無力感と孤独感とのたえがたい状態にうちかつために、二つの道がひらかれる。一つの道によって、かれは「積極的自由」へと進むことができる。かれは愛情と仕事において、かれの感情的感覚的および知的な能力の純粋な表現において、自発的にかれ自身を世界と結びつけることができる。こうしてかれは、孤立と個人的自我の統一とをすてることなしに、再び人間と自然とかれ自身と、一つになることができる。かれのためにひらかれてるもう一つの道は、彼を後退させ、自由をすてさせる。そして個人的自我と世界とのあいだに生じた分裂を消滅させることによって、かれの孤独感にうちかとうと努力する。この第二の道は、彼を世界と再び結びつけるとしても、個人として開放されるまえに、彼が世界と関係していたようなぐあいにはけっしていかない。なぜなら分離しているという事実を動かすことはできないからである。この道はもしそれがながびけば、生きていくこともできないような、たえがたい状態からの逃避にすぎない。それゆえ、この逃避の方法は、おそろしい恐怖から逃れるばあいのように、強制的な性格をおびている。またそれは多かれ少なかれ、個性と自己の統一性との完全な屈服という特徴をもっている。したがってその解決は幸福と積極的な自由へと導くものではない。原則として、それはすべての神経症的現象に見られるような解決である。それはたえがたい不安をやわらげ、恐怖をさけることによって、生活を可能にするかもわからない。しかしそれは底にひそむ問題を解決したのではなく、ただ自動的な、また、強制的な行動だけで成立しているような生活によって、その代償をはらっているのである。

『自由からの逃走』
エーリッヒ・フロム著
東京創元社

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