魔法の力

 われわれの文化においては、ともかく魔力が働いていると感じられるような事柄が役割を演じていることがしばしばある。それは貨幣である。多くの人は、金があれば何でもできると思っている。それゆえ、名誉心や虚栄心が何らかの仕方で金とか財産と関係しているのは、不思議でも何でもない。ほとんど病理学的あるいは人種的な根拠も持っていると思えるほどの所有への激しい努力も、そのように理解されるものである。だが、この現象も虚栄心以外の何ものでもない。
その虚栄心は、人がこの魔法の力によって何かを所有し、それによって偉いものだと感じることができるために、ますます全力を傾注するように仕向けるのである。このように非常に富んでいる人の一人で、すでに十分多くの資産を持っているにもかかわらず、ますます多くの金を求めている人が、あるとき、最初は困惑していたが、とうとう告白して言った。「繰り返し新しく刺激を与えてくれるものは、まさに権力なのですよ」と。この男はそのことを知っていたが、多くの人はそれを知ってはならないのであろう。
今日では、権力の保持と金および財産とが極めて密接に関連しており、富と所有を求める努力というものが多くの人にとってまったく当たり前のように思えるので、金を求めるきわめて多くの人びとが実は他ならぬ自らの虚栄心に駆られているのだということに全く気付かないのである。

『人間知の心理学』
A・アドラー著
春秋社

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